毎年12月はIPOの繁忙期となりますが、特に今年は「赤字上場」と「VC(ベンチャーキャピタル)の出口案件」という単語を聞くことが多かったように思います。ちなみに去年はソフトバンク一色でしたね。IPOの初値予想サイトでは経験則から上記の「赤字上場」と「VCの出口案件」に対しては初値が公募価格を下回ると予測されるD級評価とされることが多いです。
そこで、今回は「赤字の度合い≒売上高経常利益率」と「出口案件の度合い≒VC保有割合」と定量化し、初値に与える影響を可視化してみました。サンプル群は2017〜2019年の3年間に新規上場した266社(リート投資法人を除く)です。
売上高経常利益率(%)=経常利益/売上高×100
VC推定保有割合(%)=VC推定保有株数/発行株式数
※ベンチャーキャピタル(略称:VC)とは、ハイリターンを狙ったアグレッシブな投資を行う投資会社のこと。主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、資金を投下する。(Wikipediaより)
結論から言うと、初値価格が公募価格+10を超える確率が約94%となる基準線を設定することが出来ました。公募価格+10としたのは証券会社への売却手数料を加味したためです。
基準線式:y=0.4032x-0.18
基準線以下の33銘柄のうち16銘柄が初値価格<公募価格+10となりました(確率48%)。
基準線を大きく下に外れていても、新規上場企業の成長戦略や提供サービスの新規性、独自性が評価されて、公募価格を大きく超える初値を付けることもあります。この基準線が単純な一元的な評価には成り得ませんが、ある程度の参考になるとは考えられます。
裏を返せば、トップランナーではない(市場シェアが低い)、後発の類似サービスが容易な場合には初値が公募価格を下回る確率が高くなります。具体例をいくつか挙げると
・D級評価 ランサーズvsChatwork
D級銘柄として敬遠されながら蓋を開けてみれば初値が公募価格を上回ったケースがありました。直近ではランサーズとChatworkの対比が分かりやすいので紹介したいと思います。2019年12月は世界的な株高に助けられた面もあるとは思いますが、明暗はっきり分かれたケースでした。私を含めて資金力の乏しい一般庶民は、火中の栗(IPOの当選確率が比較的高いD級銘柄)を拾って利益を積み上げていきたいですね。
・基準線が参考にならないケース
ソフトバンク、LIXILビバのような親子上場はVC推定保有割合が0%として計算されてしまいます。
IPOの初値価格は業種、吸収金額、地合い、公募価格の設定などの様々なファクターに左右されるため、ある一定の参考にして頂ければ幸いです。